今日は浅川サイクリングコースと甲州街道を使って山梨県の山梨市まで走る。 山梨市まで走る理由は、翌日に柳沢峠の塩山市側を登るためである。
柳沢峠は東京都から日帰りもしくは1泊で遠征できるヒルクライムコースとして有名な峠だ。 筆者も2003年のゴールデンウイークに吉岡と一緒に柳沢峠を越えて甲府市へ行き、一日休養して、翌々日に柳沢峠を越えて武蔵野市へ戻ったことがある。 その時はマウンテンバイクを舗装路向けに改造した1号車で走った。 記録は丹波山村側は無念のリタイア(足をついた)、塩山市側は2時間5分だった。
今回は3年ぶりに柳沢峠を越えようというイベントである。 ウェアはレーパン + レッグウォーマーと半袖ジャージ + ウィンドブレーカ、グローブは夏用と春/秋用である。 車体は、スプロケットが12-23Tでシートピラー用大型バッグを装備している。 カメラはデジタル一眼レフカメラのOLYMPUS E-500でレンズは14-54mmと45-150mmの2本である。
いつもの武蔵野大学前のセブンイレブンで、いつもとは違う7時30分という早い時間に永山と合流する。 走りなれた武蔵境通りと鶴川街道を走って多摩川へ向かう。
多摩川原橋から多摩川サイクリングコースへと入る。 今日は長旅であるためあまりのんびりとはしていられないが、かといって運動強度を上げると甲府市まで身体がもたない。 そこで今日は心拍数の上限を150として甲府市まで走ることにする。
このまま左岸を数km上り、府中四谷橋で右岸へ渡ると浅川サイクリングコース起点のすぐそばまで行けるのだ。
どれだけ走ったかわからないぐらい走りなれている多摩川だが、時間が早いだけあっていつもとは様子が違う。 普段は10時か11時に武蔵野市を出発するため多摩川へ入るのは11時か12時なのだが、今日はまだ8時30分である。
いつもは散歩しているおじいさんやおばあさん、犬の散歩、元気いっぱいな子供が多いのだが、今日はスリムな体型の真剣にトレーニングしているローディーが多い。 多いというよりほとんどローディーしかいないと言ってもいいかもしれない。
『朝の多摩川は真面目にトレーニングしているローディーが多いな』と思いつつ府中四谷橋を目指していると、車体にガタガタと振動が伝わる。 ん?...路面が荒れているのか...いや、路面は問題ない。 振動は一定周期で発生しており、そしてだんだんと大きくなる...パンクである。
多摩川の土手でチューブを交換する。 パンク修理は終わったが、筆者は予備のチューブを1本しか持っていなかったためこれでもう予備はない。 永山が2本予備チューブを持っているが、甲府市往復で2人で2本では足りなくなる可能性がある。 府中四谷橋のすぐ近くにあるY'S BIKE PARKという自転車店でチューブを2本購入することにする。
渡るはずだった府中四谷橋を越えてさらに上流へ進みY'S BIKE PARKへと到着した。 Y'S BIKE PARKで予備のチューブを2本購入し、フロアポンプを借りて800kPaまで空気を入れる。
府中四谷橋で左岸へ渡り上流へ進むと浅川サイクリングコースへと入る。 先週に続いて2週連続の浅川サイクリングコースである。
心拍数150で浅川サイクリングコースをひたすら上る。 大和田橋の少し前で心拍計に目をやると消費カロリーが1000kcalを越えている。 今朝はおにぎりを2つ食べてきたが、おにぎり2つでは500kcalほどであり、すでにその分は使い果たしている...そろそろ何か口に入れておかねばならない。
大和田橋でサイクリングコースを抜けて一般道路へと出る。 大和田橋は甲州街道であるため、このまま甲州街道へと入り山梨を目指せばコンビニはいくらでもあるだろうが、やはり当初の予定通り高尾駅のそばまでは浅川サイクリングコースで行きたい。
川沿いの道を北上しているとセブンイレブンを発見する。 セブンイレブンで1000kcalほど補給した後、浅川へと戻り、上流へと向かう。
サイクリングコースは八王子市役所の前で突然終わりを告げ、そして浅川は北浅川と南浅川に分かれる。 ここから先は南浅川の土手上の遊歩道を走ることができるのだが、人通りが多く路面が荒れているためロードバイクにとって走りやすいコースではない。 浅川をロードバイクで走る場合は八王子市役所で折り返すのがいいだろう。
人通りの多い南浅川の土手上の遊歩道を上る。 子供の日が近いこともあり、南浅川は鯉のぼりだらけだ。
八王子市役所から4kmほどで突然未舗装路が出現し、目の前にフェンスが現れる...遊歩道の終点である。 武蔵野市を出発してから3時間30分経過している。 パンクがなければ2時間30〜3時間ほどで到着していただろう。
南浅川から一般道路に出るとそこはもう甲州街道である。 甲州街道の交通量はゴールデンウイークだけあって決して少なくはないが、かといってモチベーションを下げるほど多いわけでもない。
甲州街道に入って10分ほどで高尾山口駅の脇を通過する。 高尾山には一度も登ったことは無いのだが、そうか、こんなにも近いのか。 高尾山口駅をすぎると甲州街道は徐々に勾配がきつくなってくる。 それもそのはずで、この先は大垂水峠だ。
大垂水峠は94年頃に単車で通ったことがある。 その時は有料道路を使わずに、往路を柳沢峠越え、復路を甲州街道で富士山往復(300km)したのだ。 その思い出のツーリングで大垂水峠を通ったのだが、決して楽な峠ではなかった覚えがある。
その大垂水峠にこれから突入するのだが、今日は甲府市まで心拍数を150以下で走りきらねばならない。 登坂では平地より大きなパワーをかけなければならず、平地と同じケイデンスは心拍数が上がりすぎてしまう。 従って、心拍数を維持するためには登坂ではどうしてもケイデンスを下げなければならない。 筆者の車体はフロントが39,52T、リアが12-23Tなので最も軽いギア比は1.7であるためさらにケイデンスは下がってしまう。
この場面で心拍数を抑えるというのは賢い選択ではないのかも知れない。 登坂では筋肉と心肺のどちらかに負担がかかってしまうのは避けられないことだ。 そして、筋肉と心肺では筋肉の方がはるかに回復に時間を必要とする。 それを考えれば、明日の柳沢峠越えのためにはここで筋力を使うのは間違っているだろう。
しかし、トレーニングという意味では心拍数を150以下に抑えて走ることはとても重要であるため心拍数を上げることはしたくない。 それに、筋肉はまだ攣る気配を見せてはいないし、速度を下げれば負担は軽減できるだろう。
心拍数を150以下に維持することはできず、なんとか155で抑えながら峠を登る。
速度は6km/h台まで下がっているがなんとか心拍数155以下を維持する。 峠まであとわずかという地点で背後に気配を感じ、その直後、スリムな体型の強そうなローディーが抜いてゆく。
ほどなくして峠に到着、なんとか心拍数を155以下に維持して登ることができた。
次の瞬間、先に到着して停止していた永山が下り始める。 永山はかなり飛ばしている...うーん、永山はダウンヒル大好き人間ではなかった気がするのだが...なぜこんなにハイペースで下っているのだろう。 なぜか勢いよく下っている永山が、後ろを振り返って筆者の姿を確認すると突然速度を落とす...なぜ急に速度を落とすのだろうか。
永山がハイスピードで下っていた理由は、筆者を抜いたローディーを筆者と勘違いしたためのようだ。 ヘルメットが同じ白い色だったかららしいが...車体の色が全然違うじゃないか。 永山は峠を登ってくるそのローディーを激写してしまったらしい。 その彼は思っただろう...『なぜ俺を撮るのだ?』と。 残念なことに、その写真はほどなくして削除されたため、どのぐらい筆者と似ていたかはもうわからない。
大垂水峠から約7km走って相模湖駅を通過するも、いまだ相模湖は望めない。 さらに数km走ったところで、今はもうあまり使われていないだろう古い橋を発見したので甲州街道をそれて橋へと向かう。
初の相模湖を撮影し、一服しつつ休息をとる。 ここまでの消費カロリーを確認すると約2000kcalである...そろそろ2度目の補給をしなければならない。
甲州街道を再び走り始めると県道33号線への分岐点に差し掛かる。 県道33号線を進めばあきる野市に戻れるようだが、もちろん甲府市を目指して甲州街道を進む。
まずは24km先の大月市を目指して甲州街道を走る。 四方津駅を過ぎた先にあるセブンイレブンで休息をとる。 1000kcalほど補給した後、甲府市を目指して再び甲州街道を走り出す。
梁川駅、鳥沢駅と過ぎたところで、筆者が尻の痛みに耐えられなくなったため一旦休息をとる。 メットとアイウェア、グローブを外し、シューズを脱ぎ、臀部の筋肉をストレッチする。 休息し過ぎると尻の痛みは倍増するため、そろそろ出発することにする。
引き続き甲州街道を走り、猿橋駅を越え、ついに大月駅を通過する。 甲州街道は大月駅を過ぎてしばらくすると桂川を渡り、桂川の支流の笹子川に沿って甲府盆地へと向かう。
笹子川が表われたとなると、笹子はもうすぐである。 そして笹子の先はいよいよ甲府盆地なのだが、甲府盆地へ入るためには新笹子トンネルを通るか、旧甲州街道の笹子峠を越えなければならない。 笹子峠を越えるよりは新笹子トンネルを通るほうがはるかに負担は少ないのだが、新笹子トンネルには歩道がなく、かつ大型車がよく通るという問題がある。
甲府盆地への経路は、新笹子トンネルと笹子峠の分岐点の手前にあるファミマで考えることにし、ひとまずファミマを目指すことにする。 ガードレールに目をやると、100.0kmの表示が...ついに日本橋から100kmの地点を越えたか。
ここでまた尻の痛みがひどくなってくる...永山にそのことを告げると、『腰のカメラバッグが重いのでは』という答えが返される。 『いやあ、でも、たかだか2kgぐらいだし』と答えた筆者だが、冷静に考えると2kgは重い。
そもそも今回のツアーに2kgのカメラを持ってくる決意をしたのは、2003年の柳沢峠越えの時よりも自分の体重が5kg減っているからである。 しかし、カメラバッグは腰のみで支ええいるし、路面のギャップで上下にゆれている。 やはり、2kigを腰で支えるのは重すぎなのかもしれない。
運の良いことに筆者の車体は後部にバッグを装備している。 そのバッグにカメラバッグをくくりつければ荷物は車体に任せることができる。 一旦停止し、カメラバッグを後部バッグへとくくりつけ、再び走り出す。
先ほどまで、耐えられないぐらいの尻の痛みを感じていたが、それが嘘のように治まっている。
痛みの軽減に大きな役割を果たした後部バッグは、このツアーのために前日にわざわざ購入したものだ。 購入したのはいいが、結局はウィンドブレーカと春/秋用グローブしか入っておらず、それらは背中のポケットやサドルバッグに収納できるため実は装備してこなくても良かったかも知れないと、つい先ほどまで思っていたのだ。 しかし、買ってよかった、装備してきて良かった、神様ありがとう。
新笹子トンネル前のファミマに近づくにつれ徐々に勾配が激しくなる。
大垂水峠と同じように、心拍数は155に保つのが精一杯だが、ジリジリ登りファミマへと到着した。
ファミマで時間を確認すると武蔵野市を出発してから9時間後の16時40分だ。 ホテルのチェックインは20時にしておいたため、新笹子トンネルと笹子峠のどちらのコースを使うにしても時間的には余裕がある。 ここで3度目の補給を行いたいが、どのぐらいのカロリーを補給するかは甲府盆地へのルート次第である。
新笹子トンネルは甲府盆地に向かってゆるやかに下っている全長約3.0kmのトンネルだが、トンネル内には歩道がなく大型車がよく通るとのこと。 一方、笹子峠は登り6km + 下り6kmで標高差は600mという平均勾配10%の激坂コースである。
ここまで甲州街道を通ってきて大型車は別に多くはなかったが、悩んだ結果、笹子峠を越えることにする。 補給は笹子峠を越えるということで、1000kcalほどにする。
笹子峠は標高1100mまで登るため気温が下がるであろうことからレッグウォーマーを装備する。 エネルギー補給も完了、レッグウォーマーも装備したし、さあ出発だ。
甲州街道をそれ旧甲州街道へと入る。 トラクターで登坂している初老の紳士を抜き、その右コーナーの坂を登り終えると次に左コーナーが出現する。
その先は思わず声が出そうな激坂である。 いか−ん、いかん、いかん、これはいかんよ!! ここを越えると、明日の柳沢峠越えに影響が出てしまう...筆者が叫ぶ『トンネルを通ろう』と。
ライト、後部フラッシングライトを点灯し、甲州街道へと戻り、新笹子トンネルへ入る。 全長3000mだけあって出口はまったく見えないし、音が反響するため後ろからの車の気配が感じにくい。 25〜30km/hでひたすらペダルを回すといつの間にか前方に明かりが見えてくるが、その明かりは出口ではなく、その先にまた短めのトンネルがある...新笹子トンネルは長いトンネルと短いトンネルの2本で成り立っているようだ。
2つ目のトンネルの入り口には誘導員が停止の旗を掲げて立っているためここで停止する。 下り車線が工事中で、片側通行になっているようだ...旗が振られたので、甲府盆地を目指して2つ目のトンネルに突入する。 出口を目指して進んでいると突然後方で『ガシャン!!』と音がする。 永山が何か落としたか、車と接触でもしたかと思い振り返ると...永山は一応走っている。 何があったのか尋ねると、路面のギャップに落ち込んだが特に問題はないとのこと。
実はこの時の衝撃で永山の愛車のハンドルの角度が大きく下方に傾いていたのだが、それに気がつくのは翌日のことである。
2つ目のトンネルを抜けたところにある広いエリアに車体を停める。 ついに...ついに甲府盆地へ到着である。 ここまで来ればホテルまではあと1時間もかからないだろう。
甲州街道を進み柏尾の交差点へ到着した。 ここからは甲州街道を離れて名もない道を進む、さらば甲州街道よ。 等々力を過ぎ、上栗原を右折してホテルのある上石森へ。
しばらく走るとライトアップされた『ルートイン山梨』の文字を発見する。 『ルートイン山梨』の看板に吸い寄せされるように走りホテルへ到着した。 ホテルに着いたのは武蔵野市を出発してから11時間後の18:40分、予定より1時間ほど早い到着である。
ようやく着いた、はるか110kmの山梨市へ。 部屋へ入り入浴して汗を洗い流してから食事へと出かける。
ホテルのフロントに設置されているPCを借りてホテル周辺で食事できる場所を探す。 時間が遅く21時近いこともありファミレスしか望めないだろうがそれすらも近くにはないようだ。 わざわざ山梨まで来たのだから地元の郷土料理でも食べればよいところだが、この時間では仕方がない。
とりあえず最寄駅の中央本線の山梨市駅まで行ってみるが、店はどこも閉店している。 しかも、この辺りは人口密度の高くない場所であるためファミレスを見つけることもできない。
そういえば、ホテルのPCでネットで検索した時に『くるまやラーメン』という文字を見かけたような気がする。 携帯電話でGoogleに接続し、『山梨』と『くるまやラーメン』という2つのキーワードで検索すると、くるまやラーメンの店舗紹介ページにたどり着く。 くるやまラーメンは山梨に4店舗あるようだ、そして万力にある店舗が山梨市駅から800mほどのところにある。
800mほど西へ進みくるまやラーメンの看板を発見、店に入ってラーメンとおつまみメンマ、おつまにチャーシューを注文する。 期待を集めていたおつまみメンマがやってきたが...どうも様子がおかしい。 うーむ、西東京市のくるまやラーメンで出されるおつまみメンマはピリッと辛く、癖になる味だが、このメンマは味の薄いただのメンマだ。 そしてなぜかかいわれ大根がトッピングされている。
続いて登場したおつまみチャーシューは期待以上の味で、西東京市で食べるものよりも豊かな味だ。 チャーシューはこの店のほうが旨い...旨いが、これにもかいわれ大根がトッピングされいる。 そして、トッピングされたかいわれ大根がこちらをじっと見ている...ような気がする。
最後に登場したメインの塩バターラーメンにも、かいわれ大根が鎮座している。 かいわれ大根は、実家で暮らしていたころは割りと頻繁に食卓に登場していたので別に嫌いではないのだが、どうしてラーメンにかいわれ大根が乗っているのだという不思議感で心が満たされる。 山梨ではラーメンにかいわれ大根を乗せるのが普通なのか、それともこの店だけなのかが気になって仕方がない。
かいわれ大根の謎が解けないままだが、とりあえず店を出てホテルへと戻る。 ホテルの前にあるヤマザキストアで、バームクーヘンとチョコレートケーキ、豆乳200ml x 4本、500mlドリンク x 2本を購入する。 部屋へと戻りベッドで横になりつつ、買ってきた豆乳を1本飲む...そしていつの間にか眠ってしまう。
せっかく買ってきた水分をほとんど補給せずに眠ってしまったことが、翌日の柳沢峠で大きな問題となって襲いかかってくることになる。