今日は乗鞍エコーラインを登る。 自転車をはじめた時の目標であるマウンテンサイクリングin乗鞍(ヒルクライムレース)のコースを走るのだ。
これで、マウンテンサイクリングin乗鞍への出場および完走に一歩近づくことになる。 今年は定員オーバーで申し込みができなかったため参戦できないが、将来の出場に向けてよい経験になるだろう。 今回の目標は、3時間以内に完走することである。
9時に乗鞍観光センターに到着した。 ここは本番では大会会場となる。 今日は本番前の最後の週末であるため、最後の試走をする人達で混雑しているだろうと予想していたが意外に人は少なく、我々を含めて10名程度だ。
走り出す前にまずは作戦を立てる。 平地と同じように心拍数によるペース管理を行う。 目標心拍数を170とし、175を越えたらペースダウン、180を越えたら速やかに回復走行に移行し165まで落とす。
最後の軽量化を行うため吉岡がトイレへ向かったが、しばらく待っても戻ってこない。 一緒にスタートするか個別にスタートするか決めていなかったので、先にスタートしているかもしれないということで、永山、金子、筆者はスタートすることにする。
9時26分に金子がスタート、GPSの衛星捕捉を待っている永山と筆者は1分遅れで9時27にスタート。 最初は勾配も緩やかなため道路沿いにある宿の看板などを見ながら走る。 1.0km地点(4分)で金子を発見、しばらく永山、金子、筆者で走行する。 心拍数が160なので、ペースアップしなくては。 心拍数を170まで上げたいので、ペースアップすることを永山と金子に告げてからペースアップ。 金子はペース維持、永山は追ってきたと思ったらそのまま抜いていく。 オーバーペースっぽいのが気になるが、数分後、永山が視界から消える。 3.4km地点(18分)で、吉岡に後ろから声をかけられる。 先にスタートしたと思っていたがそうではなかったようだ。
時折、下ってくるロードバイクやマウンテンバイクとすれ違う。 まだ10時前なのにもう下っているのか。 観光センターに人が少なかったのは、みんなもっと早い時間にアタックを開始していただけで、やはりそれなりに人は多いようだ。
3.8km地点(20分)の右コーナーで永山が座っている。 トラブルかと尋ねたところ休息という返事が返ってきたのでそのまま先に行く事にする。 ここまで走って感じたのは『決して楽なコースではないが思ったほどきつくなく、柳沢峠とあまり違わない』ということである。
7.5km地点(39分)で後方から呼吸音が聞こえてくる...永山復活だ。 一緒に走るのかと思ったが、やはり永山は猛進で、しばらくして視界から消える。 筆者は無休完走を狙っているが、永山は全力走行している。 どちらもトレーニング方法の1つだと思うが、どちらが効率的なのだろう? つられて、ついペースが上がりそうになるが心拍計を見ながら心拍数が170を越えないように走る。
12.0km地点(1時間10分)の橋の手前で永山が座っている。 合図を送り、そのまま進むことに。 ここまで走っても感想は変わらずで、柳沢峠と大差ないと感じる。
しかし、しばらくしてとてもイヤなものが視界に飛び込んでくる...コンクリート舗装である。 『これが噂のコンクリート舗装か』とちょっと感激だ。 一般的な道路と違ってイン側が特に勾配がキツく、本番ではアウト側が混雑するらしい。 今日は交通規制されていないためアウト側を攻めるわけにもいかないので、イン側を登る(左コーナーなので)。
ロードバイクの重いギアで登れるのかと心配になったが、前輪をリフトさせながらもなんとか心拍数170以下で登る。 これで一息と思いきや、回復できる緩い区間がないまま、次のコンクリート舗装が出現。 心拍数は180を越えている。 2つ目のコンクリート舗装を越えても回復できる区間がなく、心拍数が180を越えたまま、3つ目のコンクリート舗装が出現...もう勘弁して欲しい。 ここは確かに難所だ...さすが乗鞍、柳沢峠とは違う。 12.4km地点(1時間12分)から、ここ12.6km地点(1時間14分)までの間ずっと心拍数が180を越えたままだ。
回復できる緩い勾配が未だ現れないため、コンクリート舗装で上昇した心拍数がなかなか下がらない。
目の前に小屋が見える。 有名な冷泉小屋かな?
右コーナーを登ると『冷泉小屋前』と書かれたバス停が見える。 またまた感激だ。
でも、ここでちょっと失敗。 のどが渇いたので水分補給をし、ボトルを戻そうとしたところ手元が狂って落としてしまう。 せっかくここまで足をつかずに登ってきたのに... 自分のアホさ加減にあきれながらも車体から降りてボトル回収...あーあ。
15.4km地点(1時間39分)で突然勾配が緩くなる。 コンクリート舗装で上昇した心拍数がようやく160台まで下がる。
しばらく走ると、山荘が見えてくる。 本番では第2チェックポイントとなる位ヶ原山荘である。 サイクルコンピュータの走行距離から判断してゴール地点まであと5.0kmというところだ。 山荘から先はまた厳しい勾配が続いているが、あと5kmだからと言い聞かせ気合を入れる。
今まで登ってきた道を見下ろしてみると...文字通り『つづら折れ』である。
大雪渓が見える。
大雪渓の天然雪を利用してこの時期(8月)にスキーをする人達もいるとか。 自転車で森林限界を超えている自分もどうかと思うが、こんなところでスキーをしようという人達もどうかしている。
18.6km地点(2時間8分)の大雪渓右ヘアピンを抜けると、高山植物が目立つようになる。 ここまでくれば森林限界を超えたことをハッキリと実感できる。 自転車で森林限界を超えることになるとは数年前までは考えもしなかったことだ。
信じられないかもしれないが、この高さまで登ってくると音を感じることがほとんどなくなる。 乗鞍エコーラインはマイカーの乗り入れが規制されており、許可を受けているバスやタクシーしか走ることができない。 しかもバスやタクシーもあまり多くは走っていないのだ。 ロードバイクのタイヤは気圧が高く溝も浅いため、登坂の速度であれば路面との摩擦の音は聞こえない。 周りには高山植物しか生えていないため風に揺れる葉の音もない。 そのため、聞こえてくるのは自分の心臓の鼓動の音だけなのだ。 心拍数が高くなっていることもあって、『ドクン・ドクン』という激しい心臓の音だけが聞こえる。
右側に駐車場らしき平坦なエリアを発見。 この駐車場に入ってクルクル周っていれば回復できるかもという悪魔の囁きが聞こえる。 本番では駐車場には入れないんだからと言い聞かせ悪魔を追い払う。
大雪渓右ヘアピンからゴールまでは平均勾配7.5%の最後の難所である。 なのに向かい風...ちくしょう。 ゴールまでの正確な距離がわかればいいのだが、初めて走るコースなので全くわからないし知る術もない。 と、思っていたら隣りを20km/h以上でロードバイクがダンシングで登坂していく。 きっとゴールはもうすぐなのだろう。 しかし、これ以上速度を上げることができない。
亀のようにノロノロと登っていくと目の前にゲートが現れ、突然路面が下りに変わる。 目の前には不自然なぐらい青い色をした池が見える。 これが、鶴ヶ池に違いない。
だとすればこのゲート付近がゴールのはず。
2時間27分でゴール!! 売店や神社、郵便局などがある場所へと向かう。 先にゴールしている吉岡の愛車を発見、隣りに車体をとめて休憩する。 自販機でカフェオレを購入したら、なんとホットだ。 あーあ、汗だくなのに間違えてホットを買ってしまうとは。
吉岡を発見したのでタイムを尋ねてみたところ、2時間9分だったとのこと。 しばらくして永山がゴール。 タイムは2時間40分とのこと。
金子はまだゴールしていないが、とりあえず永山・吉岡と記念撮影する。
登坂中は景色を見る余裕など全くなかったが、改めて周りを見てみるととても素晴らしい景色である。 景色の美しさに感動するなど随分と久しぶりのことだ。
金子もゴール、タイムは2時間57分だ。 全員3時間以内に完走という目標を達成することができた。
長野と岐阜の県境にて。